5月4日(土)【第37回ファイティング・スピリット・シリーズ】第513回ダイナミックグローブ/日本中重量級最前戦の応援、誠にありがとうございました。
八王子中屋ジムからは、淵上誠・荒川仁人・福本祥馬・三谷雄造の4選手が出場しました。それぞれの内容は違いますが、いずれも懸命な試合の末の結果となりました。
今後も、この日の経験を糧に頑張って参りますので、どうかこれらも応援の程、宜しくお願い致します!
==メインイベント==
■東洋太平洋ミドル級タイトルマッチ12回戦
淵 上 誠
[チャンピオン/WBC世界同級14位/20勝(11KO)7敗/八王子中屋]
vs
柴田明雄
[挑戦者/日本S・ウェルター級王者/20勝(9KO)7敗1分/ワタナベ]
9R1分7秒負傷判定負け0-3(83-87,82-89,81-89)
(こんどうさんの写真館)
挑戦者、柴田明雄のカットの傷が深く、試合続行が不可能とみなされ試合が止まった瞬間、淵上誠はリングに崩れ、頭をうなだれるようにして俯いた。
判定は8回終了後に読み上げられていた公開採点でも明らかだったよう、83-87,82-89,81-89で淵上の3−0の判定負けとなった。
初回からペースを握ったのは挑戦者にして日本スーパーウェルター級の柴田。お得意のハンドスピードを活かした左右のジャブが主導権と距離を彼のものにさせた。
対する淵上もいつも同様に変則的なジャブから左のストレートをボディに打ち込み、自分の距離を模索した。しかし、柴田がより二人の間の空間を行き来するフットワークにより効果的に試合を進めていることが、回を重ねるにつれて見えてきた。
4回までの公開採点では2者が柴田、1者がドローと数字以上に柴田のペースを思わせる内容で中盤に入っていった。
そこからこれからとばかりにプレッシャーを強めていった淵上は、次第にボディを中心に攻め、柴田の足を止めていった。
そして次第に足が止まってきた柴田に対し、さらに攻撃的に攻め試合の流れが変わってきたその時だった、打ち合いの中から柴田の右フックが淵上の顎を捉えダウン喫してしまう。
もう後のなくなった淵上は前に出続け、柴田をプレッシャーの中で攻め続けた。そして試合の行方は淵上へ天秤が傾きかけ始めていたその時から、3回に起こったアクシデントでの柴田のカットにより、再び柴田の方へと傾いていった。
淵上のここまでのキャリアから、ここからこそが彼の見せ所であり、また柴田にとっては勝負の場所だった。多くの人がここから淵上がカムバックしてくる、あの信じられないほどの精神力がまた見れる、そんな期待を持って後半を見つめていたはずだった。
しかしその機会は訪れず、淵上は戦いきることなく終了を告げられて崩れていった。
新チャンピオンの表情にも決して望んだ結末ではなかったことがわかる。このような終わり方に対しチャンピオンも、またその陣営も申し訳ないと思っていてくれているは痛いほどに伝わってきた。
淵上は今、久方ぶりの休養をとっている。思えば日本タイトルを獲得してから、休む暇なく防衛し続け、挑戦し、そして夢の舞台だった世界のリングまで走り続けていた。
そんな沢山の経験を短い期間で積んできたからこそ、今は答えを出す必要のない休みが必要なのだと思う。
自分一人で戦ってきたのではない、という気持ちが強い分だけ、簡単に決められないこともあるのだと思う。
淵上はしっかりと考え、今後の自分の道を決められると思うからこそ、この休息も大切なのだと思う。
決意を持って望んだタイトルマッチ、破れても尚優しく声をかけてくださった皆様、本当にありがとうございました。
どうか今は淵上を、八王子中屋ジムの今を見守ってくださればと思います。
本当にありがとうございました!
==世界前哨戦==
■62kg 10回戦
荒川仁人
[WBC世界ライト級1位/WB0世界ライト級5位/26戦23勝15KO2敗1分/八王子中屋]
vs
パクプーム・オーベンジャマッド
[10戦8勝3KO2敗/タイ]
2R29秒KO勝ち
(こんどうさんの写真館)
荒川仁人の世界前哨戦は僅か3分と29秒、左ストレート1発でのKO勝利となった。
その試合で見せたストレートの鋭さに、その後を見据える荒川の意気込みを感じさせた。
初回は冷静に相手の動きを見る荒川、相手タイ人の果敢な攻めもしっかりと捌いていった。そして2回少しの間をおいてから放たれた左、相手のガードのサイド、こめかみをこするようにして打ち抜かれた、そんなストレートだった。
それが当たった瞬間、相手は失神をしたかのように足を中に広げてバタリと倒れた。しばらく動く事ができなかった。
後のテレビ放送で見た映像から、相手選手が演技で倒れた訳ではなく、パンチが当たるその刹那、本当に気を失っていた事が分かった。荒川は試合後、その仕留めた左拳が腫れ上がっていたのは、ナックルでしっかりと相手の急所を、ピンポイントで撃ち抜いた事の証明に他ならなかった。もはや童顔ではなくなった荒川が、しかし異名される”童顔のスナイパー”、その言葉通り、狙撃手たる所以を見せた試合だったと言えそうだ。
荒川の技術、精神、そして決意は世界に向けて整ったと言える。あとはそこに彼自身がまだ足りないという体力をつけることが重要になりそうだ。
そしてそれを扱えるだけの戦略を携え、荒川仁人は戦術を持って世界タイトル獲得を目指す。
どうか皆様、そんな荒川仁人の世界挑戦、7月28日の大舞台、どうかご期待のほど、宜しくお願い致します!
==第3試合==
■ミドル級6回戦
福本祥馬
[元高校5冠/1勝(1KO)/八王子中屋]
vs
相沢謙次
[2006年度東日本新人王/6勝(1KO)11敗/オサム]
4R2分51秒TKO勝ち
(こんどうさんの写真館)
後楽園ホール初登場の福本祥馬は元東日本新人王の相澤謙次(オサム)と対戦。
初回は相手の荒々しいボクシングにつき合ってしまったが、その後はほぼ完璧に福本がペースを握った。長いジャブからストレート、アッパーへと繋ぎ、距離をしっかりと修正し、攻めどころでラッシュを見せて自分のボクシングを展開していった。
そして迎えた4回、ジャブをこれでもかというほど、絶妙の距離から放ち続け、つなげた右で相手が下がると、追うようにしてラッシュし続けるとレフェリーが割って入り、TKO勝利で試合を決めた。
初回、プロで初めての後楽園ホールは、アマチュアで場数を踏んでいる福本であっても緊張をもたせる場だったようだ。勝負はできたにしても危険な相手の距離の中で撃ちあう福本に冷静さは見えなかった。
しかしコーナーに帰ってきてからの2回以降、福本は外からの攻めでより攻撃的に試合を進めていった。それは初回の反省から、じっくりとホールの感触を味わっているかのようにも見えた。
そこからのフィニッシュまでの持って行き方に、彼のアマでのキャリアを感じさせた。そしてこれが彼にとって本当のデビューとなったのだと思う。
衝撃的なものは見せなかった。しかしアマチュア時代に見せていた彼のボクシングとは違ったであろう”プロ仕様”の福本祥馬の姿は、今後、その幅の広いボクシングスタイル、長がくなるであろうキャリアを見せてくれる始まりだったと言えるのかもしれない。
既に次戦の予定は決まっている。しかし相手はまだ未定、である。
今後も、八王子中屋ジムの、そして将来の日本重量級最大のホープへのご注目、何卒よろしくお願い致します。
==第1試合==
■S・ライト級4回戦
三谷雄造
[4勝(1KO)1敗/八王子中屋]
vs
ベルジェール・ジョナサン
[3勝(1KO)1敗/18古河]
1R1分36秒TKO勝ち
(こんどうさんの写真館。)
第1試合目として行われた三谷雄造vsベルジェール・ジョナサンのスーパーライト級4回戦は、初回の中盤、三谷のタイミング抜群の左フック1発でダウンを奪いそのままTKOでの勝利となった。
昨年の東日本新人王準決勝からの復帰戦。自分自身をコントロールすることが出来ず、初回KO負けとなった試合での経験を糧に、三谷は練習と試合をしっかりと結びつけてくれた。
この試合に望むまで三谷はトレーナーの会長と共に練習を行なっていたのを思い出す。
会長自身は同じ日に出場する元高校5冠の福本、世界前哨戦となる荒川の練習もある中で行なっていた共同作業だった。
格としては上になる二人がいる為、普段の練習でも三谷と会長の練習時間は自然と限られていた。しかしそんな短い時間の間でも互いのコミュニケーションを高めることが出来たのは、三谷が聞くことに懸命だったからなのだと思う。
アマチュアで6戦1勝5敗だった男は、プロで6戦5勝1敗という数字を残して今年の夏、東日本新人王予選を迎える。右と左、共に1発で倒したKO勝利を携えて。
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